13/14シーズンのliverpoolの約束された成功と失敗 前編
前編
題材は3-3のドローに終わったクリスタルパレス戦です。
この試合、リアルタイムで戦術談義や雑談しながら見てましたが、後から見直してみると今季レッズの良い部分も悪い部分も凝縮されていた試合だったので、戦術勉強がてら取り上げてみたいと思いました。
といってもクリスタルパレス戦をみるのは後編からなんですけどね。
最初に今季レッズのサッカーの基本を説明したいと思います。
1 レッズ戦術に見るBRのサッカー
まずロジャーズ・レッズの今季のフォーメーションと基本哲学です。
今季後半戦のレッズの爆発的な得点力を生み出した4-3-3です。
割とワイドに展開しており、スアレスは内にライン際にと大きな行動範囲を持っているけど、スターリングはワイドに張って受けてからカットインというパターンが多いし、スタレッジ典型的なCFポジショに居ることが圧倒的に多い。
上記からBRはFW vs DFの1v1を作り出す事を目的にしている・・・、つまるところ現代に蘇った古典的ワイドサッカーである。
イングランドの古典的サッカーチームに拭い難く染み付いているクロス、ワイド、対人といった要素の内、クロスのみをオミットし、スルーパスをジョイントした手腕はお見事です。
つまり根幹は1980年代のイングランドサッカーだけど、決定機の演出はクロスじゃなくてスルーパス、21世紀の味付けをした20世紀のサッカー、それがロジャーズ・レッズ。
2 レッズ守備にみるBRの管理力
一番最初の攻撃は守備。どこでディレイして、どこでボールを奪うのかを考える、それが現代サッカーの攻撃起点です。
上SSを見れば言うまでも無いでしょうが、前線も中盤もハードな運動量が求められる。その為コウチーニョやジェラードは60分程度で息切れする事も少なくなかったし、スタリッジ、スアレス、スターリングと比較的スタミナのある選手達でも、70分を回れば精彩を欠く事が多かった。
しかし今年2月ぐらいからレッズの選手は走り回る事をサボらなかった、コウチーニョですらサボらずに走っていた。それは何故なのか?、明確に勝てるシステムである事をロジャーズが示したからだし、その試合中のハードワークを徹底する事を選手に求めたからだ。実際に1月~2月には試合中に怠惰な動きをしていたコウチーニョを前半途中で交代させている。
しかしながら、その後のコウチーニョの活躍や運動量などから察すると、BRは懲罰交代しても選手に納得させられる説明をしているのだろうと思う。信賞必罰しながらも選手からの信頼を失わないでいる、非常に高いコミュニケーション能力、それがロジャーズ・マネージメント。
3 レッズ攻撃にみるBRの鑑識眼
鑑識眼があれば選手特性を見極め、チームにとって最も有効な戦術を採用する事が出来る。
スアレスの万能性と攻撃力を両立させる為に、良い意味で前線へボールを運べるコウチーニョをフリーロールのトップ下運用、インサイドハーフの皮を被ってるのがまた上手い部分だし、実際にアーセナル戦やシティ戦で見る様にコウチーニョの守備も良くなってる。
またそれだけではスアレスをマークされまくると攻撃が積むので、CFでスタリッジを使う事でコウチのパスの選択肢を増やすと同時に相手への危険度を高める。
コウチにハードなマークが付いてボールの維持すら難しくなる可能性もあるので、守備力とバランスポジショニングに優れ、ハードワークをこなせるヘンドをやや守備的なインサイドハーフで起用する。
ロングパスが得意なジェラードをアンカーに置くことでスアレス、スターリングへの直接パス供給、体を張る守備とキャプテンシーも相まって、チーム全体に安心感を与える。
この6人の起用方法こそが、ロジャーズ・タクティクス。
さてこれで基本的な事は理解いただけたと思います。
後編ではクリスタルパレス戦のスタッツを使いながら説明したいと思います。